病気の話

新型インフルエンザ対策の懸念

新型インフルエンザが学級閉鎖や休校をおこして猛威をふるっています。重症化しやすいなどの報道もあり、心配になってクリニックを訪れる患者さんから新型のワクチンは打てるのかという質問を受ける頻度が増えています。
まだ国内では新型インフルエンザに対するワクチンは試験的投与が始まったばかりですが、海外で既に作られたワクチンを輸入する方向性はできているようです。しかし先日、ワクチン接種の優先順位が発表されました。多数のインフルエンザ患者さんをみて殉職?する可能性のある医療従事者(医師・看護士をさすとのこと)100万人が第1であり、2番目が妊娠と持病がある人とのこと。医療従事者とはどこまでを含めるのか(受付などの事務職は入れないらしいが)、持病がある人とはどこまでの病気をさすのか(病気も軽いものから重いものまで様々である)、統制をとるためとはいえ、この発表はあまりにも唐突過ぎる感があります。
本来ならば受ける自由があるはずのワクチンを受ける優先順位が国からのお達しで決められて、受けたいのに受けられない人が出て実際にインフルエンザに感染してしまったりする可能性があるのは、国の方針が最初からまちがっていたからです。簡単にインフルエンザ患者がすり抜けてしまう成田空港での水際作戦を大騒ぎしながらいつまでも続けたり、新型インフルエンザの診察は最初は大きい病院の発熱外来に限定するなんて言いながら結局はクリニック含めてどこでも受けられるようにしなさいと方針を変えたり、病気の出始めは保健所への報告が必要などと言いながら患者さんが増えるともう不要と発言をひるがえしたりなど、インフルエンザの専門家をかかえている国が決めている割には方針がコロコロ変わる、要するに長期ビジョンがないのです。
私は新型インフルエンザはあっという間に広がる、対処も今までの季節性インフルエンザと同じで構わないとずっと思っていました。5月にインフルエンザA型(恐らく新型)の患者さんをみても特に保健所への報告はしませんでした。報告自体は煩雑であり、報告しても何の意味もないと考えたからです。同じような医師は他にたくさんいたはずです。国が決める方針にはある程度沿いながらも、患者さんの利便性の視点にたって、その時の最良の方法を常に模索するべきと考えています。