病気の話

花粉症の治療(2019年)

花粉症の方にとっては憂鬱な季節となりました。多くの方が春先にはくしゃみをしており、花粉症は今や国民病の様相です。この病気の第一発見者で「スギ花粉症」と命名したのは、赤松院長の出身の東京医科歯科大学の斉藤洋三先生です。斉藤先生が1964年当時に勤めていたスギ並木で有名な栃木県日光市の病院で、春先に鼻炎や結膜炎の患者さんが増えることに気付いてスギ花粉が原因と突き止めました。赤松院長も学生時代に斉藤先生の講義を聞きましたが、こんなに多くの患者さんの病気とは当時は思ってもいませんでした。2~5月にくしゃみ・鼻水や目の痒みで来院される方はほぼスギ花粉症であり、一部はヒノキの影響も加わって6月にかけても症状が続きます。花粉症の薬もいろいろと開発されており、同じ薬でも患者さんによっては眠気の副作用が強く出たりするため、自分に合う薬を選ぶ必要があります。ジェネリックのあるフェキソフェナジン(商品名アレグラ)、少量ステロイド配合錠(商品名セレスタミン)、オロパタジン(商品名アレロック)やベポタスチンベシル(商品名タリオン)は昔からある薬で値段的にもそれ程高くありません。効果としてはジェネリックがまだないザイザルや、1日1回のピラノアやルパフィンの方が副作用が少なくすむかもしれません。目の痒みが強い場合には点眼薬も処方しますし、内服で眠気が強い方はステロイド点鼻薬をおすすめします。コンタクトを使っている方ではアレジオン点眼薬なら問題ありません。妊娠中の方では基本的には局所的作用のみの点眼薬・点鼻薬を使うことが中心となりますが、症状が強い場合に内服として小青竜湯という漢方も処方します。眠気が強くなるため内服薬を嫌い、点眼薬・点鼻薬の煩雑さを避けるために、注射を強く希望される方には、ステロイド薬の筋肉注射を臀部に行っています。また即効性はないのですが、花粉症の体質を変えるアレルゲン免疫療法も行っています。これはスギ花粉のエキスを毎日舌下する「舌下免疫療法」と言い、花粉症のシーズンに合わせて前年の秋から内服を開始します。今年のシーズンには間に合いませんが、来年は是非楽になりたいという方には今年の秋からの治療開始をおすすめします。この治療には錠剤タイプのものも出ています。花粉症の症状は花粉飛散が終われば症状もおさまってしまう一時期のものであり、花粉症としての診断的な苦労は何もありません。しかし、ダニ・イネ・動物上皮や、卵・果物などの食物にアレルギー反応をおこすような方では、ご希望があればスギ以外に心配と思われる項目を加えて採血してアレルギーの原因を特定することは可能です。花粉症の治療だけでなく診断についても細かいご希望があればご相談下さい。森林の防災などの観点からスギが植えられて国民病の花粉症が起きたわけですから、スギ伐採あるいは花粉の少ない品種への植え替えをすれば良いことですが、この政策は一向に進展がない状況のようです。