病気の話

糖尿病の恐さについて

糖尿病とはインスリン作用の不足のために、食事で取りこんだブドウ糖が有効に使われずに血糖値が普通より高くなっている状態をいいます。血糖が高いだけならば問題ないのですが、高血糖の状態が全身の血管を傷つけることから、糖尿病では目・腎臓・足などに障害を引き起こします。重症化すると目では失明し、腎臓では人工透析が必要になり、足では壊死をおこして切断するまでに至ります。日本では透析が必要な患者さんのほとんどが糖尿病からによるものです。
糖尿病が軽ければ食事・運動療法だけで病気の進行を抑えられる方もいます。しかし食事の調整と運動が十分にできないことが多く、通常は薬が必要になってきます。薬は基本的には飲み薬だけで十分ですが、重症なものではインスリン注射が必要になることがあります。飲み薬も食前にのむもの、食後にのむもの、1日1回ですむものなど様々な種類があります。近年は新しいタイプの飲み薬が開発されており、古いタイプの薬と組み合わせながら血糖コントロールが上手にできれば、インスリン注射も不要になってきているほどです。
糖尿病の検査は採血で血糖を調べるだけでなく、HbA1c値をみることが一般的です。この値は過去1~2か月の平均的な血糖の動きを反映します。検査の日に甘いものを食べてしまって検査値がおかしくなると心配する必要はありません。HbA1cは6.2以下が正常値です。初診でみる患者さんでHbA1cが10以上の方を時々みます。ここまでデータが悪化してからでは、治療に対する反応も悪く、病状が落ち着くまでに大変に時間がかかります。
糖尿病は「ひそかに進行する全身病」と言われ、症状が出て病気がみつかる時には、失明寸前、透析の一歩手前、足切断ギリギリという重症な状態だったということがあり得る恐いものです。最近は30歳代・40歳代の若い方の糖尿病も増えています。若い働き盛りの方が、知らない間の糖尿病の進行で倒れてしまうことがないように、ご注意下さい。