病気の話

肺炎ワクチン

「肺炎は日本人の死因の第3位。肺炎はもう他人事ではありません。65歳を過ぎたら肺炎予防にワクチンを打ちましょう。」という宣伝が新聞などに出ています。一面全部の広告なので、呼吸器を専門にしている私以外の一般の方でも目にして、なるほどワクチンを打っておこうと思うかもしれません。三郷市では75歳以上の高齢の方を対象に、4000円の補助を出すことでワクチン接種を推奨しており、私のクリニックでも多数の患者さんに注射を行っています。乳幼児定期予防接種のように、ほぼ全額補助が出る制度は大変に有難いものです。しかしこの肺炎ワクチンに関しては、三郷市では75歳以上に限定されていますし、高齢者でも補助が出ていない市町村も多く、75歳未満では完全な自費になってしまいます。当院では自費であっても7350円と割安な値段設定にしており、注射を1回打てば5年間は効果が保証されるという安心感はありますが、費用負担はバカになりません。一律に肺炎といっても様々な原因菌があり、肺炎ワクチンで予防できるものは肺炎球菌という一部のものだけです。最近散発的に流行を繰り返し、若い方でも重症化することがあるマイコプラズマ肺炎は全く別の菌種によるものです。新聞広告を見て、心配だからワクチンを打ちたいという65歳前後の方から相談を受ける件数が最近増えています。しかし前述の通り、日頃風邪も引かないような元気な方が肺炎に突然かかることは通常ありませんので、ワクチン接種をあせる必要はありません。しかし以前に結核にかかったり、肺気腫などで肺機能が落ちているような方は、65歳になったばかりでもワクチン接種を受けておいた方が良いかもしれません。このような方でもワクチン接種を受けたからといっても安心はできません。注射は肺炎予防だけであって、他の病気には対応していません。規則正しい生活を送って、風邪も引かないように気を付けるという日常の行動、および何かおかしいと思ったら早めにかかりつけ医を受診するという意識が大切と考えます。